メルセデス Cクラスの歴史|W201からW206まで、40年の進化を追う|過剰品質からコストカット、そして復活へ
メルセデス Cクラスの歴史は、1982年に遡る。
当時、「Cクラス」という名前はまだなかった。その祖先は、190E(W201)——「Baby Benz」と呼ばれた、メルセデス初のコンパクトモデルだ。
それから40年。W201 → W202 → W203 → W204 → W205 → W206と、6世代を経て、Cクラスは進化してきた。
しかし、その進化は「進歩」だけではない。
過剰品質からコストカット、品質低下、そして復活——Cクラスの歴史は、メルセデス・ベンツそのものの歴史だ。
この記事では、40年の進化を追い、何が変わり、何が失われたのかを語る。
1. W201(1982-1993):全ての始まり——Baby Benzの誕生
📅 W201 基本情報
生産期間: 1982-1993年(11年間)
愛称: Baby Benz(初のコンパクトメルセデス)
ボディサイズ: 全長4,420mm × 全幅1,678mm × 全高1,385mm
エンジン: 直4 1.8L / 2.0L / 2.3L / 2.5L / 2.6L、直4ディーゼル 2.0L / 2.5L
デザイナー: ブルーノ・サッコ
W201の革新性
①5リンク式リアサスペンション
・1982年当時、革命的な技術
・5本のリンクでリアアクスルを支持
・コーナリング時のトー変化を抑制
・乗り心地と操縦安定性を両立
・この技術は、W202以降も継承される
②過剰品質の時代
・「コストより品質。100年使える車を作れ」
・ドアヒンジ:削り出し、100万回開閉を想定
・ボディ剛性:戦車のような剛性感
・防錆処理:亜鉛メッキ、30年経っても錆びない
・エンジン耐久性:50万km、100万kmが当たり前
③シンプルな電装
・ABSすらオプション
・トラクションコントロールなし
・故障箇所が少ない、自分で整備可能
W201の功績
- BMW 3シリーズに対抗:メルセデス初のコンパクトモデル
- 5リンク式サスペンション:現代のスタンダードに
- DTMで活躍:コスワース2.5-16、Evolution
- アイルトン・セナが絶賛:1984年ニュルブルクリンク優勝
- 「最後の過剰品質メルセデス」:神話の始まり
W201は、Cクラスの「原点」であり、「理想」だった。
2. W202(1993-2000):初代Cクラス——コストカットの始まり
📅 W202 基本情報
生産期間: 1993-2000年(7年間)
愛称: 初代Cクラス
ボディサイズ: 全長4,487mm × 全幅1,720mm × 全高1,416mm
エンジン: 直4 1.8L / 2.0L / 2.3L、V6 2.8L / 3.6L、直4ディーゼル 2.2L / 2.5L
デザイナー: ブルーノ・サッコ
W202で「Cクラス」誕生
1993年、190E(W201)の後継として、「Cクラス」が誕生した。
ネーミングの変更:
・190E → Cクラス
・Eクラス(W124)、Sクラスとの統一感
・「C」= Compact(コンパクト)
W202の功績
- 5リンク式サスペンション継承:W201の遺産
- デザインの進化:より洗練された外観
- V6エンジン追加:C280(2.8L V6)
- AMGモデル登場:C36 AMG、C43 AMG
しかし、W202は「品質低下」の始まりだった
⚠️ W202で失われたもの
①コストカット開始
・内装の質感低下:プラスチック増加
・ドアヒンジの簡素化:W201より軽い
・防錆処理の簡略化:錆びやすくなった
②故障が増えた
・ヘッドガスケット抜け(M111エンジン)
・エアマスセンサー故障
・電装系トラブル増加
③「W201の方が良かった」という声
・旧車マニアの間で「W201 > W202」という評価
・「コストカットでメルセデスらしさが失われた」
W202は、「過剰品質時代の終わり」を象徴する車だった。
3. W203(2000-2007):電子制御の時代へ
📅 W203 基本情報
生産期間: 2000-2007年(7年間)
ボディサイズ: 全長4,526mm × 全幅1,728mm × 全高1,426mm
エンジン: 直4 1.8L / 2.0L、V6 2.5L / 3.0L / 3.5L、V8 5.4L(AMG)、直4ディーゼル 2.2L / 2.7L
特徴: デザイン刷新、電子制御増加
W203の進化
①デザインの大幅刷新
・丸目ヘッドライトから楕円形へ
・よりモダンな外観
・ブルーノ・サッコからスティーブ・マティンへ
②電子制御の増加
・ESP(横滑り防止装置)標準装備
・BAS(ブレーキアシスト)標準装備
・電動パワーステアリング採用
③AMGモデルの充実
・C32 AMG(3.2L V6スーパーチャージャー、354ps)
・C55 AMG(5.4L V8、367ps)
W203の問題点
⚠️ W203の悪評
①初期型の品質問題
・錆びやすい(特にリアフェンダー)
・電装系トラブル多発
・エアマスセンサー故障頻発
②内装の質感低下
・プラスチック感が強い
・W202よりさらに質感低下
③「メルセデスの暗黒時代」
・2000年代前半のメルセデスは品質低下が顕著
・W203はその象徴
W203は、「電子制御は増えたが、品質は低下した」という矛盾を抱えていた。
4. W204(2007-2014):品質回復——メルセデスの復活
📅 W204 基本情報
生産期間: 2007-2014年(7年間)
ボディサイズ: 全長4,581mm × 全幅1,770mm × 全高1,448mm
エンジン: 直4 1.8L / 2.0L(ターボ)、V6 3.0L / 3.5L、V8 6.2L(AMG)、直4ディーゼル 2.1L / 2.2L
特徴: 品質回復、C63 AMG登場
W204の復活
①品質の大幅向上
・内装の質感が向上
・防錆処理の改善
・電装系の信頼性向上
・「やっとメルセデスらしさが戻ってきた」
②デザインの洗練
・よりアグレッシブな外観
・スポーティなライン
③C63 AMG登場
・6.2L V8自然吸気エンジン(M156)
・457ps、600Nm
・BMW M3(E90/E92)と激闘
・「最後のNA V8 AMG」として伝説に
④走りの質感向上
・5リンク式サスペンション継承
・電子制御と機械的な質感のバランス◎
W204の評価:
・「W203の反省を活かした」
・「やっとメルセデスらしい品質が戻った」
・「中古で狙い目の世代」
W204は、「メルセデスの復活」を象徴する車だった。
5. W205(2014-2021):最新技術の結晶——MRA登場
📅 W205 基本情報
生産期間: 2014-2021年(7年間)
ボディサイズ: 全長4,686mm × 全幅1,810mm × 全高1,442mm
エンジン: 直4 1.5L / 2.0L(ターボ)、V6 3.0L(ターボ)、V8 4.0L(ターボ、AMG)、直4ディーゼル 2.0L / 2.2L
特徴: MRA(後輪駆動アーキテクチャ)、48V マイルドハイブリッド
W205の革新
①MRA(Modular Rear Architecture)
・後輪駆動専用プラットフォーム
・軽量化(アルミニウム使用)
・重量配分50:50に近づく
・Sクラス(W222)と共通設計
②エアサスペンション(オプション)
・可変ダンパー
・ComfortからSport+まで調整可能
③48V マイルドハイブリッド
・ISG(スターター兼ジェネレーター)
・燃費向上、スムーズな加速
④C63 AMGの進化
・4.0L V8ツインターボ(M177)
・476ps(標準)/ 510ps(S)
・NA V8からターボV8へ
W205の評価
高評価:
・「Cクラス史上最高の完成度」
・「Sクラスの技術が降りてきた」
・「走り、質感、全てが向上」
不満点:
・「電子制御が多すぎる」
・「アナログ感が失われた」
・「C63 AMGがターボになって、音が地味」
W205は、「技術の結晶」であり、「アナログの終焉」でもあった。
6. W206(2021-現在):電動化時代——MBUX、4気筒のみ
📅 W206 基本情報
生産期間: 2021年-現在
ボディサイズ: 全長4,751mm × 全幅1,820mm × 全高1,438mm
エンジン: 直4 1.5L / 2.0L(ターボ + 48V MHEV)、直4 2.0L(ディーゼル + 48V MHEV)
特徴: MBUX、全車48V マイルドハイブリッド、4気筒のみ
W206の変化
①全車4気筒エンジン
・V6廃止
・直4 2.0L + 48V マイルドハイブリッドのみ
・C43 AMGすら4気筒(2.0L ターボ + 電動スーパーチャージャー、408ps)
・「Cクラスに6気筒はもう載らない」
②MBUX(Mercedes-Benz User Experience)
・11.9インチ縦型ディスプレイ
・音声認識「ハイ、メルセデス」
・Sクラス(W223)と同じUI
③後輪操舵(リアアクスルステアリング)
・低速:最大2.5度逆位相(小回り性能向上)
・高速:同位相(安定性向上)
④電動化加速
・全車48V マイルドハイブリッド
・PHEVモデルも追加
W206への賛否
肯定的な意見:
・「未来のCクラス」
・「MBUX、めちゃくちゃ便利」
・「48V マイルドハイブリッド、スムーズ」
否定的な意見:
・「6気筒が消えた…」
・「C43 AMGが4気筒って、AMGじゃない」
・「画面が大きすぎて、運転中に気になる」
・「アナログ感ゼロ」
W206は、「電動化時代のCクラス」であり、「賛否両論」を巻き起こしている。
7. 40年の進化——世代別比較表
| 世代 | 生産期間 | 主な特徴 | 評価 |
|---|---|---|---|
| W201 | 1982-1993 | 5リンク式サス、過剰品質、Baby Benz | ⭐⭐⭐⭐⭐ 伝説 |
| W202 | 1993-2000 | 初代Cクラス、コストカット開始 | ⭐⭐⭐ 品質低下 |
| W203 | 2000-2007 | デザイン刷新、電子制御増加 | ⭐⭐ 暗黒時代 |
| W204 | 2007-2014 | 品質回復、C63 AMG(NA V8) | ⭐⭐⭐⭐ 復活 |
| W205 | 2014-2021 | MRA、48V MHEV、最高の完成度 | ⭐⭐⭐⭐⭐ 技術の結晶 |
| W206 | 2021-現在 | 全車4気筒、MBUX、電動化 | ⭐⭐⭐⭐ 賛否両論 |
8. 何が変わり、何が失われたのか?
変わったもの(進化)
- 電子制御の高度化:ESP、エアサス、後輪操舵
- 燃費の向上:ダウンサイジングターボ、48V MHEV
- 安全性の向上:エアバッグ、先進運転支援システム
- 快適性の向上:MBUX、エアサス、静粛性
- 環境性能:CO2排出量削減、ディーゼル浄化
失われたもの
⚠️ Cクラスが失ったもの
①過剰品質
・W201の「100年使える」設計思想
・削り出しドアヒンジ
・戦車のような剛性感
②アナログの操作感
・油圧パワーステアリング
・ケーブル式スロットル
・シンプルな計器類
③6気筒エンジン
・W206で完全消滅
・C280(2.8L V6)の滑らかさ
・C350(3.5L V6)のトルク
④NA V8(AMG)
・C63 AMG(6.2L V8 NA)の咆哮
・「最後のNA V8 AMG」
⑤シンプルさ
・W201は故障箇所が少ない
・W206は複雑すぎて、自分で整備できない
まとめ
- W201(1982-1993):Baby Benz、過剰品質、伝説の始まり
- W202(1993-2000):初代Cクラス、コストカット開始、品質低下
- W203(2000-2007):デザイン刷新、暗黒時代
- W204(2007-2014):品質回復、C63 AMG(NA V8)、復活
- W205(2014-2021):MRA、最高の完成度、技術の結晶
- W206(2021-現在):全車4気筒、MBUX、電動化、賛否両論
Cクラスの40年は、「進化」と「喪失」の物語だ。
電子制御は進化した。燃費も向上した。安全性も快適性も、格段に良くなった。
しかし、何かが失われた。
W201の過剰品質、アナログの操作感、6気筒の滑らかさ、NA V8の咆哮——
これらは、もう二度と戻ってこない。
「進化」とは何か?「より良い車」とは何か?
Cクラスの40年は、その問いを投げかけ続けている。

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