最終更新日:2025年12月
BMW xDrive vs ベンツ 4MATIC vs アウディ quattro|どの4WDが一番優れているのか
BMW xDrive、メルセデス・ベンツ 4MATIC、アウディ quattro。ドイツ御三家の4WDシステムは、「4輪駆動」という言葉で括れないほど、設計思想が異なる。
BMWは「電子制御で瞬時に最適化」、メルセデスは「安定性重視のバランス配分」、アウディは「機械式の確実性」を追求した。この違いは、雪道、ワインディング、サーキットで決定的な差となって現れる。
この記事では、自動車エンジニアの視点から、「どの4WDが一番優れているのか」──ではなく、「どのシチュエーションでどのシステムが最適なのか」を徹底解説する。
基本スペック比較|数字だけでは見えない本質
| 項目 | BMW xDrive | ベンツ 4MATIC | アウディ quattro |
|---|---|---|---|
| デフォルトトルク配分(前:後) | 40:60 | 45:55 | 40:60(Torsen T3) 50:50(Torsen T1) |
| 可変範囲 | 0:100 〜 100:0 (完全可変) |
30:70 〜 70:30 (4MATIC+は0:100〜100:0) |
15:85 〜 70:30 (機械式自動調整) |
| センターデフ方式 | 電子制御多板クラッチ | 多板クラッチ付き プラネタリーギア |
Torsenデフ(機械式) または Crown Gear |
| 応答速度 | 100ミリ秒以内 | 数ミリ秒 | 瞬時(機械式のため) |
| トルクベクタリング | DPC搭載モデルのみ (後輪左右配分可能) |
4MATIC+のみ (AMGモデル) |
Sport Diff搭載モデル (S/RSモデル) |
| 通常時の駆動方式 | 後輪駆動ベース (前輪クラッチ接続) |
常時4WD (固定トルク配分) |
常時4WD (機械式連結) |
| 重量増加 | 約30kg | 約50kg | 約40kg |
設計思想の決定的な違い|3つの哲学
BMW xDrive:「後輪駆動の延長」としての4WD
BMWのxDriveは、「基本は後輪駆動、必要に応じて前輪を駆動」という思想で設計されている。
構造:
- 後輪駆動がベース → トランスミッション出力軸は常に後輪に直結
- 前輪への動力伝達は電子制御多板クラッチで接続
- クラッチの締結力を調整することで、トルク配分を0:100〜100:0まで無段階調整
この設計により:
- 通常走行時は40:60で「後輪駆動的な感覚」を維持
- 低速時(20km/h以下)は完全ロックで発進トラクション確保
- 高速時(180km/h以上、一部モデル)は完全後輪駆動で効率重視
- 予測制御: GPS・車速・ステアリング角から路面状況を予測し、スリップ前に4WDに移行
- Dynamic Performance Control(DPC): 後輪左右のトルク配分も可能(X5M/X6M等)
- 軽量化優先: 約30kgの重量増加で済む(競合より20kg軽い)
メルセデス 4MATIC:「安定性第一」の保守的設計
メルセデスの4MATICは、「常に4輪を駆動し、安定性を最優先」する設計だ。
構造(縦置きエンジンモデル):
- トランスミッション内蔵のトランスファーケースで前輪にも常時動力伝達
- センターデフはプラネタリーギア+多板クラッチ
- デフォルト45:55配分、基本ロックトルク50Nm
この設計により:
- 常に4輪が駆動されているため、安定性が非常に高い
- トルク配分は30:70〜70:30の範囲(BMWより狭い)
- ESP(電子制御)と連携して、滑りやすい路面でも安定
- 4MATIC(標準): 45:55固定ベース、30:70〜70:30可変
- 4MATIC+(AMG): 0:100〜100:0完全可変、ドリフトモード搭載
- AMGセダン/クーペ: 31:69(リアバイアス強化)
- AMG SUV: 40:60(安定性重視)
アウディ quattro:「機械式の確実性」を信じる伝統
アウディのquattroは、「機械式センターデフで、電子制御に頼らない」という哲学を貫いている。
構造(縦置きエンジンモデル):
- Torsenデフ(トルク感知式)でセンター駆動
- Torsen T3:40:60デフォルト、プラネタリーギア使用
- Crown Gear(2010以降):40:60デフォルト+クラッチパック併用
Torsenデフの仕組み:
- ヘリカルギアのスラスト力(軸方向の力)を利用
- 前後輪の回転差を検知すると、自動的にトルクを多く配分
- 電子制御なしで、機械的に瞬時に反応
- 強み: 応答速度が電子制御より速い、故障リスクが低い、ドライバーの意図に忠実
- 弱点: 片輪が完全に浮くと動けない(トルクバイアス比の限界)
- 対策: EDL(電子デフロック)でブレーキ制御、浮いた車輪を擬似的にロック
シチュエーション別性能比較|どこで差が出るのか
雪道・凍結路面|トラクション性能
| システム | 評価 | 理由 |
|---|---|---|
| BMW xDrive | ★★★★☆ | 予測制御が優秀。滑る前に4WDに移行。ただし、完全停止からの発進はやや弱い(40:60スタート) |
| 4MATIC | ★★★★★ | 常時4WD+45:55配分で安定性抜群。ESPとの連携で、滑りやすい路面でも安心 |
| quattro | ★★★★☆ | Torsenの機械式応答は速いが、片輪が完全に浮くと苦戦。EDLが介入すれば問題なし |
ワインディング・峠道|ハンドリング性能
| システム | 評価 | 理由 |
|---|---|---|
| BMW xDrive | ★★★★★ | 40:60のリアバイアスで「後輪駆動的」な感覚。DPC搭載モデルは後輪トルクベクタリングで俊敏 |
| 4MATIC | ★★★☆☆ | 45:55で安定だが、アンダーステア傾向。4MATIC+(AMG)なら31:69でスポーティ |
| quattro | ★★★★☆ | 40:60のリアバイアス+Sport Diff(S/RS)でニュートラル。ただし機械式の限界あり |
サーキット・スポーツ走行|限界性能
| システム | 評価 | 理由 |
|---|---|---|
| BMW xDrive(DPC付) | ★★★★★ | 後輪左右トルク配分で限界が高い。M5/M8はサーキット専用モード搭載 |
| 4MATIC+(AMG) | ★★★★★ | ドリフトモード搭載。0:100〜100:0の完全可変でプロ仕様 |
| quattro(Sport Diff付) | ★★★★☆ | RS4/RS5のSport Diffは優秀だが、センターデフは機械式の限界あり |
高速道路|効率性
| システム | 評価 | 理由 |
|---|---|---|
| BMW xDrive | ★★★★★ | 高速時は完全後輪駆動に移行(一部モデル)。フリクションロス最小 |
| 4MATIC | ★★★☆☆ | 常時4WD駆動のため、フリクションロスあり。燃費はやや不利 |
| quattro | ★★★★☆ | quattro ultraなら通常時FF、高速時2WD化。通常quattrは常時4WD |
モデル別の違い|同じ名前でも中身は別物
BMW xDrive:FWDベースとRWDベース
xDriveには、2つの全く異なるシステムが存在する。
| ベース | 対象モデル | システム |
|---|---|---|
| RWDベース | 3/4/5/7シリーズ、X3〜X7 | Magna Actimax トランスファーケース 40:60デフォルト、0:100〜100:0可変 |
| FWDベース | X1(F48)、1/2シリーズ(FWD) | GKN Driveline 100:0デフォルト、必要時のみリア駆動 |
重要: FWDベースのxDriveは、「通常時FF、滑ったらリア駆動」という全く異なる思想。RWDベースとは別物と考えるべき。
メルセデス 4MATIC:縦置きと横置き
| ベース | 対象モデル | システム |
|---|---|---|
| 縦置きエンジン | C/E/Sクラス、GLE/GLS等 | 45:55デフォルト、30:70〜70:30可変 常時4WD |
| 横置きエンジン | Aクラス、CLA、GLA等 | FFベース、電子制御リアクラッチ 必要時のみリア駆動 |
| 4MATIC+(AMG) | AMGモデル全般 | 0:100〜100:0完全可変 ドリフトモード搭載 |
アウディ quattro:TorsenとHaldex
| システム | 対象モデル | 特徴 |
|---|---|---|
| Torsen quattro | A4〜A8、Q5〜Q8(縦置き) | 機械式常時4WD 40:60デフォルト |
| Haldex quattro | A3/S3、TT、Q3(横置き) | FFベース、電子制御 必要時のみリア駆動 |
| quattro ultra | A4 allroad、Q5等 | 通常時FF、予測的に4WD化 燃費重視 |
結論|目的別おすすめ4WDシステム
「ドライビングプレジャー重視」→ BMW xDrive(RWDベース)
理由:
- 40:60のリアバイアスで「後輪駆動的な感覚」
- 電子制御の応答速度が速く、ワインディングで俊敏
- DPC搭載モデルなら、後輪トルクベクタリングで限界が高い
推奨モデル: M340i xDrive、X3 M40i(DPC搭載)
「雪道・悪路の安心感」→ メルセデス 4MATIC
理由:
- 常時4WD+45:55配分で、最も安定性が高い
- ESPとの連携が優秀、滑りやすい路面でも安心
- 保守的な設計で、予想外の挙動が少ない
推奨モデル: E300 4MATIC、GLE 450 4MATIC
「機械式の信頼性重視」→ アウディ quattro(Torsen)
理由:
- 電子制御に頼らない機械式の確実性
- 40:60のリアバイアスで、スポーティな走り
- 40年以上の実績と信頼性
推奨モデル: A4 quattro、S4(Sport Diff搭載)
「サーキット・限界走行」→ 4MATIC+(AMG)または xDrive DPC
理由:
- 後輪トルクベクタリング搭載で限界が高い
- ドリフトモード等、プロ仕様の制御
- 0:100〜100:0の完全可変トルク配分
推奨モデル: BMW M5 xDrive、Mercedes-AMG E63 S 4MATIC+
まとめ|「最高の4WD」は存在しない
BMW xDrive、メルセデス 4MATIC、アウディ quattro──「どれが一番優れているか」という問いに、単純な答えはない。
xDriveは「後輪駆動の延長」、4MATICは「安定性第一」、quattrは「機械式の信頼性」。それぞれが異なる哲学で設計され、異なるシチュエーションで真価を発揮する。
あなたが求めるのは「ワインディングでの俊敏さ」なのか、「雪道での安心感」なのか、それとも「機械式の確実性」なのか。その答えが、あなたにとっての「最高の4WD」を教えてくれる。

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