なぜマツダだけが3.3Lなのか?|BMW・ベンツ・マツダ 直6ディーゼル 48V世代の工学的頂上決戦
2025年、EV全盛の時代に、あえて「直列6気筒ディーゼル」を作り続ける3社がある。
BMW、メルセデス・ベンツ、そしてマツダ。
スペックを見ると、奇妙な事実に気づく。なぜマツダだけが3.3Lなのか?BMW 3.0L、メルセデス 2.9L、そしてマツダ 3.3L。排気量が大きいのに、パワーは最も控えめ(254ps)。トルクも550Nmと、BMW・ベンツの700Nmに及ばない。
しかし、燃費を見ると状況は一変する。マツダ CX-60:21.1km/L。対してBMW X5:12.4km/L、メルセデス GLE:11.9km/L。排気量が最も大きいのに、燃費は圧倒的だ。
この記事では、BMW B57、メルセデス OM656M、マツダ SKYACTIV-D 3.3という3つの直6ディーゼルを、工学的に徹底比較する。
1. 直6ディーゼルという選択
2025年現在、量産乗用車で直列6気筒ディーゼルエンジンを作り続けているのは、世界でわずか3社しかない。
| メーカー | エンジン型式 | 排気量 | 最高出力 | 最大トルク |
|---|---|---|---|---|
| BMW | B57D30T2 | 2993cc | 303ps/4400rpm | 700Nm/1750-2250rpm |
| メルセデス・ベンツ | OM656M | 2927cc | 340ps/3600-4400rpm | 700Nm/1200-3200rpm |
| マツダ | SKYACTIV-D 3.3 (e-SKYACTIV D) |
3283cc | 254ps/3750rpm | 550Nm/1500-2400rpm |
一見すると、マツダは「負けている」ように見える。排気量は最大なのに、出力もトルクも最も低い。
しかし、ここに工学的な深い意図が隠されている。
BMWとメルセデスが「パワー」を追求する中、マツダは「熱効率」という別次元の戦いを挑んでいる。排気量3.3Lは、パワーのためではない。熱効率40%超えという理想を実現するための、綿密に計算された選択なのだ。
2. 排気量の真実:3.0L vs 2.9L vs 3.3L
2-1. BMW B57:伝統の3.0L

BMWの直6ディーゼル「B57」は、排気量2993cc。なぜ3.0Lなのか?
- 税制優遇:多くの国で3.0L以下に税制メリット
- モジュラー設計:単筒容積約500cc × 6気筒 = 2993cc
- ボア×ストローク:84.0mm × 90.0mm(ガソリンB58と共通)
- パワー重視:303ps/700Nmという高出力
B57は、BMWの新世代モジュラーエンジン「Bシリーズ」の一員。3気筒のB37、4気筒のB47、そして6気筒のB57は、すべて単筒500ccで設計されている。ガソリンエンジンとの部品共用率は約40%に達し、開発コストを大幅に削減している。
BMW B57の進化
初期型(2015年)
- 最大噴射圧:250MPa(ソレノイド式)
- ツインターボ(シーケンシャル)
- クワッドターボ仕様も存在(B57D30S0)
最新型 B57D30T2(2020年〜)
- 最大噴射圧:270MPa(ピエゾ式)
- 48V ISG(8kW)搭載
- クワッドターボは排ガス規制で廃止
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2-2. メルセデス OM656M:効率の2.9L

メルセデスの直6ディーゼル「OM656」は、排気量2927cc。なぜ2.9Lという中途半端な数字なのか?
- モジュラー設計優先:ボアピッチ90mmに統一
- シリンダー間わずか7mm:世界最薄レベル
- ボア×ストローク:82.0mm × 92.3mm
- 全長の短縮:様々なモデルに搭載可能
OM656は、4気筒のOM654、そして直6ガソリンのM256と基本設計を共有する。このモジュラー戦略により、シリンダーピッチを90mm、シリンダー間の厚みをわずか8mm(実質7mm)に抑えた。結果、直6エンジンでありながら非常にコンパクトな全長を実現している。
OM656からOM656Mへの進化(2023年)
OM656(2018年〜)
- 最高出力:340ps
- 最大トルク:700Nm
- 2ステージターボ
OM656M(2023年〜)
- 48V ISG(20hp=約15kW)搭載 ← 3社中最強!
- 最大噴射圧:270MPa(ピエゾ式)
- 出力・トルクさらに増強(具体値非公表)
2-3. マツダ SKYACTIV-D 3.3:逆転の3.3L

そして、マツダの直6ディーゼル「SKYACTIV-D 3.3」は、排気量3283cc。なぜ3.3Lなのか?
ここに、マツダの革新的な発想がある。
「ライトサイジング」という新概念
マツダのエンジニアは、CX-60(車重約1,900kg)を力強く走らせるために必要なトルクを計算した。答えは550Nm。
SKYACTIV-D 2.2(2.2L直4)が450Nmを発生させているので、同じ技術を使えば2.7Lで550Nmは達成可能だった。
しかし、マツダは3.3Lを選んだ。なぜか?
- 燃費向上のため:余った空気をEGR(排ガス再循環)に置き換え
- NOx削減のため:EGRで燃焼温度を下げる
- 理想燃焼のため:空気の余裕が熱効率を高める
つまり、550Nmのトルクを出すには2.7Lで十分。でも、燃費とNOxを最適化するには3.3Lが必要だったのだ。これは「ダウンサイジング」の真逆、「ライトサイジング」である。
SKYACTIV-D 3.3のスペック
基本仕様:
- ボア×ストローク:86.0mm × 94.2mm
- 圧縮比:15.2(ディーゼルとしては低め)
- 単筒容積:547cc × 6気筒
- DCPCI燃焼(Distribution Controlled Partially Premixed Compression Ignition)
- 2段エッグ燃焼室
e-SKYACTIV D(48V版):
- 48V ISG:12.4kW
- 最高出力:254ps/3750rpm
- 最大トルク:550Nm/1500-2400rpm
- WLTCモード燃費:21.1km/L
| 項目 | BMW B57 | メルセデス OM656M | マツダ SKYACTIV-D 3.3 |
|---|---|---|---|
| 排気量選択理由 | 税制+モジュラー | モジュラー+全長短縮 | 熱効率+NOx削減 |
| 設計思想 | パワー重視 | 静粛性+効率 | 理想の内燃機関 |
| ボア×ストローク | 84.0×90.0mm | 82.0×92.3mm | 86.0×94.2mm |
| 単筒容積 | 約499cc | 約488cc | 約547cc |
3. 燃焼技術の違い:誰が最も進化しているか
3-1. BMW B57:過給で攻める
BMWのアプローチは、高度な過給技術でパワーとレスポンスを引き出すことだ。
- ツインターボ(シーケンシャル):低圧+高圧の2段過給
- 可変ジオメトリーターボ(VGT):一部仕様で採用
- ピエゾ式インジェクター:270MPa(2020年〜)
- クワッドターボ(廃止):B57D30S0は4基のターボを搭載していたが、排ガス規制で生産中止
B57の最大の特徴は、レスポンスの良さだ。低圧ターボと高圧ターボのシーケンシャル制御により、低回転から高回転まで途切れないトルクを発揮する。2,700rpmを境に4基すべてのターボが働くクワッドターボ仕様(廃止)は、過給技術の極致だった。
3-2. メルセデス OM656M:摩擦で守る
メルセデスのアプローチは、摩擦低減と静粛性の追求だ。
- NANOSLIDE摩擦低減加工:シリンダーウォールにスチールカーボン材を溶射コーティング
- アルミブロック+スチールピストン:熱膨張率の差で摩擦40%減
- 2ステージターボ:低圧+高圧の効率的過給
- ピエゾ式インジェクター:270MPa(2023年、OM656M)
OM656の革新は、材料工学の勝利だ。アルミブロックとスチールピストンという熱膨張率の異なる素材を組み合わせることで、摩擦を40%以上低減。さらに、シリンダーウォールにNANOSLIDE®加工を施すことで、フリクションを極限まで減らしている。
試乗レビューでは「本当にディーゼルなのか疑いたくなる」「ディーゼルっぽさをほとんど感じない」という評価が並ぶ。これは、材料と加工技術による静粛性の証明だ。
3-3. マツダ SKYACTIV-D 3.3:燃焼で極める
マツダのアプローチは、燃焼そのものを理想化することだ。
- DCPCI燃焼:Distribution Controlled Partially Premixed Compression Ignition(空間制御予混合圧縮着火)
- 2段エッグ燃焼室:独自形状で燃料と空気の混合を促進
- 理想燃焼領域の拡大:従来50km/h以下 → 新型140km/hまで
- 低Pmax設計:最大燃焼圧を抑えて軽量化
- 圧縮比15.2:ディーゼルとしては低め(理由は後述)
DCPCI燃焼とは何か?簡単に言えば、「燃料噴射のタイミングと場所を精密に制御することで、理想的な予混合燃焼を実現する」技術だ。
DCPCI燃焼の仕組み
従来のディーゼル燃焼は、燃料を噴射した瞬間に着火する「拡散燃焼」が主体だった。これは燃焼が遅く、NOxとススが発生しやすい。
DCPCI燃焼では、2段エッグ燃焼室という独自形状を使い、燃料と空気を事前に混ぜてから着火させる「予混合燃焼」を実現。これにより:
- 燃焼期間が短くなる(熱効率向上)
- 燃焼温度が下がる(NOx激減)
- ススが出ない(DPF不要レベル)
マツダは、この技術により実用域で熱効率40%超えを達成した。これは、量産ディーゼルエンジンとして世界トップクラスだ。
3-4. 燃焼技術比較表
| 項目 | BMW B57 | メルセデス OM656M | マツダ SKYACTIV-D 3.3 |
|---|---|---|---|
| 過給方式 | ツインターボ(シーケンシャル) | 2ステージターボ | シングルターボ |
| 噴射圧 | 270MPa(ピエゾ) | 270MPa(ピエゾ) | 非公表 |
| 圧縮比 | 16.5 | 15.5 | 15.2 |
| ブロック材質 | アルミ合金 | アルミ合金 | アルミ合金 |
| 特殊技術 | VGT(一部) | NANOSLIDE | DCPCI + 2段エッグ燃焼室 |
| 設計哲学 | パワー&レスポンス | 静粛性&高級感 | 熱効率の理想追求 |
4. マツダ独自理論:熱効率を支配する7つの因子
ここで、マツダの核心に迫る。なぜマツダは、パワーを犠牲にしてまで熱効率にこだわるのか?
それは、「熱効率7因子理論」という独自の設計思想があるからだ。
4-1. 熱効率7因子とは?
マツダは、内燃機関の熱効率を支配する7つの制御因子を定義し、それぞれを理想化することで究極の効率を目指している。
①圧縮比
理想:できるだけ高く
SKYACTIV-D 3.3:15.2
理由:低Pmaxで軽量化優先(機械抵抗低減)
②比熱比
理想:高温燃焼ガスの比熱比を高く
実現方法:EGR多用
3.3Lにした最大の理由!
③燃焼期間
理想:できるだけ短く(急速燃焼)
実現方法:DCPCI燃焼
2段エッグ燃焼室による空間制御
④燃焼時期
理想:上死点直後
実現方法:予混合圧縮着火
実用中負荷域まで拡大(〜140km/h)
⑤壁面熱伝達
理想:シリンダー壁への放熱を最小化
現状:最大の課題(マツダ公言)
次世代技術を開発中
⑥吸排気行程圧力差
理想:ポンピングロス最小化
実現方法:可変バルブタイミング
ターボ過給圧との連携
⑦機械抵抗
理想:フリクション最小化
実現方法:低Pmax設計
軽量ピストン、低張力リング
4-2. 各世代の進化:Step 1 → Step 2
Step 1(SKYACTIV-D 2.2)
- 低圧縮比(14.0)で低Pmax実現
- リーンPCI燃焼(低負荷域のみ)
- 機械抵抗低減
Step 2(SKYACTIV-D 3.3)
- ②比熱比:大幅改善(3.3L + EGR多用)
- ③④燃焼期間・時期:理想化(DCPCI燃焼)
- ⑦機械抵抗:さらに低減(直6化)
- 結果:熱効率40%超え(実用域)
特に重要なのが②比熱比だ。なぜ3.3Lにしたのか?答えはここにある。
なぜ3.3Lで比熱比が改善するのか?
550Nmのトルクを出すには、理論上2.7Lで十分。しかし3.3Lにすると、空気が余る。
この余った空気を、EGR(排ガス再循環)に置き換える。EGRは酸素をほとんど含まないので、燃焼温度が下がる。燃焼温度が下がれば:
- NOxが激減する(NOxは高温で発生)
- 比熱比が高まる(低温ガスは比熱比が高い)
- 熱効率が向上する
つまり、3.3Lという「空気の余裕」が、理想燃焼を可能にしているのだ。
4-3. BMWとメルセデスは7因子理論を使っていない
では、BMWとメルセデスはどうか?
- BMW:体系的な7因子アプローチなし
- パワー&レスポンス重視
- 個別技術の積み重ね
- 過給圧で熱効率カバー
- メルセデス:摩擦低減に注力
- NANOSLIDE(⑤壁面熱伝達に近い)
- ⑦機械抵抗低減
- しかし体系的な7因子アプローチではない
| メーカー | アプローチ | 結果 |
|---|---|---|
| BMW | パワー&過給 | 303ps、高レスポンス |
| メルセデス | 摩擦低減&静粛性 | 340ps、最高級感 |
| マツダ | 7因子理論 | 熱効率40%超え |
4-4. なぜマツダだけが7因子理論を使うのか?
小メーカーの生き残り戦略
マツダは、トヨタやVWのような物量では勝てない。だから、技術の本質で差別化する。
内燃機関の理想を追求する = ブランド価値。これが「2%戦略」の核心だ。
BMWとメルセデスがパワーとラグジュアリーで戦う中、マツダは「内燃機関の理想」という誰も到達していない領域を目指している。
5. 48Vマイルドハイブリッド:3社の統合戦略
2025年現在、3社すべてが48Vマイルドハイブリッドを採用している。なぜ48Vなのか?
5-1. なぜ48Vなのか?
- 12Vでは出力不足:アイドリングストップ程度しかできない
- 400Vは高コスト:インバーターや安全対策が必要
- 48V = 最適解:安全性(60V未満)とコストのバランス
5-2. 各社の48Vシステム比較
| メーカー | エンジン型式 | ISG出力 | システム名称 | 配置 |
|---|---|---|---|---|
| BMW | B57D30T2 | 8kW(約11ps) | 48V スタータージェネレーター | クランクシャフト直結 |
| メルセデス | OM656M | 20hp(約15kW) | ISG(第2世代) | クランクシャフト直結 |
| マツダ | e-SKYACTIV D | 12.4kW(約17ps) | M Hybrid Boost | P2配置(クラッチ介在) |
注目すべきは、メルセデスのISG出力が3社中最強だという点だ。20hp(約15kW)のアシストは、加速時やエンジン始動時に大きな貢献をする。
5-3. システム統合の違い
BMW B57D30T2
配置:クランクシャフト直結
出力:8kW
機能:スタート&ストップ、回生、アシスト
メルセデス OM656M
配置:クランクシャフト直結(第2世代ISG)
出力:20hp/200Nm
機能:スタート&ストップ、回生、強力なアシスト
マツダ e-SKYACTIV D
配置:P2(エンジンとトランスミッション間)
出力:12.4kW
機能:トルコン不要化、スムーズな発進
マツダのP2配置は、トルクコンバーターを廃止できる点が特徴。モーターがクラッチの役割を果たすため、8速ATをダイレクトに繋げる。これにより、伝達効率が向上し、レスポンスも良くなる。
6. 実用燃費の真実:WLTCモード徹底比較
そして、最も衝撃的な数字がこれだ。
| 車種 | エンジン | 排気量 | 車重 | WLTCモード燃費 |
|---|---|---|---|---|
| BMW X5 35d | B57D30T2 | 2993cc | 約2,100kg | 12.4km/L |
| メルセデス GLE 450d | OM656M | 2927cc | 約2,150kg | 11.9km/L |
| マツダ CX-60 e-SKYACTIV D | SKYACTIV-D 3.3 | 3283cc | 約1,910kg | 21.1km/L |
排気量が最も大きいのに、燃費は圧倒的。
マツダ CX-60の21.1km/Lは、BMW X5の1.7倍、メルセデス GLEの1.77倍だ。
6-1. なぜマツダが圧勝するのか?
- ①車重が軽い:約1,910kg(BMW/ベンツは2,100kg超)
- ②熱効率40%超え:DCPCI燃焼の威力
- ③理想燃焼領域が広い:50km/h以下 → 140km/hまで拡大
- ④低Pmax設計:フリクションが少ない
- ⑤3.3Lの余裕:EGR多用でNOx削減&熱効率向上
特に重要なのが、理想燃焼領域の拡大だ。従来のSKYACTIV-D 2.2は、低負荷域(50km/h以下)でしか理想燃焼できなかった。しかし、SKYACTIV-D 3.3は、実用中負荷域(〜140km/h)まで理想燃焼を維持できる。
つまり、高速道路を100km/hで巡航している時も、街中を50km/hで走っている時も、常に理想燃焼している。これが、圧倒的な燃費の秘密だ。
7. 工学的結論:どのエンジンが優れているか?
7-1. 総合評価
| 評価項目 | 1位 | 2位 | 3位 |
|---|---|---|---|
| 熱効率 | マツダ(40%超) | メルセデス | BMW |
| パワー | メルセデス(340ps) | BMW(303ps) | マツダ(254ps) |
| 静粛性 | メルセデス | BMW | マツダ |
| 実用燃費 | マツダ(21.1km/L) | BMW(12.4km/L) | メルセデス(11.9km/L) |
| レスポンス | BMW | メルセデス | マツダ |
| 技術革新性 | マツダ(7因子理論) | メルセデス(NANOSLIDE) | BMW |
7-2. 目的別おすすめ
燃費重視なら
マツダ CX-60 e-SKYACTIV D
- 21.1km/L(WLTC)
- 熱効率40%超え
- 軽油代節約
- 環境性能
パワー&高級感なら
メルセデス GLE 450d
- 340ps/700Nm
- ISG 20hp
- 静粛性No.1
- アウトバーン性能
スポーツ性能なら
BMW 540d xDrive
- 303ps/700Nm
- レスポンスNo.1
- xDrive統合制御
- FRフィーリング
7-3. 工学的結論
「目的が違うから、答えも違う」
BMW B57は、FRスポーツセダン用ディーゼルとして最適化されている。パワー303ps、レスポンスの良さ、xDriveとの統合制御。「駆け抜ける歓び」を損なわないディーゼルだ。
メルセデス OM656Mは、高級サルーン用ディーゼルとして最適化されている。340psの圧倒的パワー、「ディーゼルと気づかない」静粛性、アウトバーン巡航性能。「最善か無か」の答えだ。
マツダ SKYACTIV-D 3.3は、理想の内燃機関としてのディーゼルを追求している。熱効率40%超え、燃費21.1km/L、7因子理論による体系的アプローチ。小メーカーが生き残るための「技術による先進」だ。
ただし、「熱効率」という一点においては、マツダが工学的に最も進化している。
8. まとめ
- 3社の直6ディーゼル:BMW B57D30T2、メルセデス OM656M、マツダ SKYACTIV-D 3.3
- 排気量選択の理由:
- BMW 3.0L:税制+モジュラー
- メルセデス 2.9L:モジュラー+全長短縮
- マツダ 3.3L:熱効率+NOx削減のライトサイジング
- 燃焼技術:
- BMW:過給で攻める(ツインターボ、270MPa)
- メルセデス:摩擦で守る(NANOSLIDE、270MPa)
- マツダ:燃焼で極める(DCPCI、2段エッグ燃焼室)
- 熱効率7因子:マツダ独自の体系的アプローチ、3.3Lは②比熱比改善のため
- 48Vシステム:メルセデス20hp(最強)、マツダ12.4kW、BMW 8kW
- 実用燃費:マツダ21.1km/L >>> BMW 12.4km/L ≒ メルセデス 11.9km/L
- 静粛性:メルセデス > BMW > マツダ
- 設計哲学:
- BMW:駆け抜ける歓び(FRスポーツ用)
- メルセデス:最善か無か(高級サルーン用)
- マツダ:技術による先進(理想の内燃機関)
「マツダの3.3Lは、パワーのためではない。燃費とNOx削減のための『逆転の発想』だ。」
欧州勢がパワーを追求する中、マツダは熱効率40%超えという理想を選んだ。排気量を大きくして空気を余らせ、その余った空気をEGRに置き換える。これにより、NOxを削減し、比熱比を高め、熱効率を向上させる。
BMWとメルセデスが「700Nmのトルク」で勝負する中、マツダは「熱効率7因子の理想化」という誰も到達していない領域を目指している。
これが、グローバル販売シェア2%の小メーカーが生き残るための「2%戦略」の本質である。

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